んにゃ。私の家はこの界隈じゃ1番小さい。 庭だって、夫の同僚たちの家の庭の中で確実に1番狭い。 趣味の牧場を持ってるKさんのことは考えないとしても Mさんちでは正式規格のネットを張ってバレーボールができる。 Aさんちにはちゃんと泳げるプールがある。 だけどうちには、バレーコートもプールもない。 ゲートボールのコートさえ取れやしない。(注1) 実にささやかな庭である。 が。 いくら狭いと言ったって、一応はテキサスの庭である。 夜中、眠気覚ましに散歩できる程度の面積はあるんである。 庭があればそこには草が生える。 市の規則で雑草を丈12インチ以上に伸ばしちゃいかんと決まっているので 警告文書を貰わぬよう、毎日せっせと草を取らねばならない。 月曜は草取り(注3)、火曜も草取り、水曜も木曜も金曜も草取り、 土曜日曜は会社が休みの宿六にも手伝って貰って草取り、 朝に取って夕も取り(注5)、それでも前庭の半分も処理できない。 ため息つきながら月曜に仕事を済ませた区画を振り返り見れば 既に新たな雑草がぐんぐんと生育しているんである。 なるほど「これじゃいくら毎日掃除したって追っつかない」だ。 みどりの指など要らぬ、触れた草全てをを瞬時に枯らす茶色の指が欲しい。 園芸雑誌花とゆめはタンポポを根絶やしにする術を特集すべきだ。 ツインズ戦くらい連れてってやるから下僕になって腰据えて草を取れ佐倉。 時折、午後の3時間だけ草取りすれば済むニポポ寮の中庭が羨ましい。 きっとうちの庭より狭いんだ。札幌行ったら笑ってやろううひゃひゃひゃひゃ。 って、我が家の庭面積を自慢するのはこの文の趣旨ではない。 問題は、草取りの際の服装である。
1年前に買った空色のTシャツ、これがアメリカによくある粗悪品で 最初はぶかぶかで太腿くらいまであったはずの丈が 洗濯する度に縮み、遂には臍を覆うのがやっとになってしまった。 一方、ずぼんである。 多くの日本女性には、アメリカの婦人服はどうにも大きすぎる。 発育途上の少女用の服ならば胴囲腰囲も合うが そういう服は意匠もガキんちょ向けなんである。 短パンの丈が目を剥くほどに短いのは我慢するとして 股上が異様に浅いのは困ったな。 洗って縮まなくとも最初から臍が出てる。 このTシャツとこの短パンを組み合わせて着るとどうなるか… しゃがんで背中を丸めると、もろに出るんである。 背中とぱんつ。 そう、こんな感じだ。

せっかく青の上下で揃えてるのに、空色のボールになれやしない。 いや、そんなことは別にどーだっていい。 どーでもいいってわけにはいかないのは、背中とぱんつ。 恥の文化を背負っている大和の人である私は ぱんつ丸見えはちょっちイヤである。 私の家は町内の比較的主要な通りに面していて 庭の前の交通量は結構多いのだ。 「あ ぐんぜのぱんつだ 安全のため徐行いたしまあす」で 財界の名門の社長の御曹司に見初めてもらえるならそれもいいが ただ単に嘲われるだけのみっともないのはお断りだ。 そこで、ぱんつが隠れるよう、古い長袖シャツを背負ってみる。 身頃で腰を覆い、両袖を前に回してきゅっと縛る。 よし、醜い物はとりあえず見えなくなったぞ。 でもこの姿、何かに似てないか。 …志姫ちゃんだ。 安曇の志姫の、後ろに掛けたエプロンだ。 彼女の作業着も古くなってゴムが伸びきっていて 屈むと背中が出る状態だったのに違いない。 あるいは生地が薄くなって修繕不能の穴があいているとか。 後ろエプロンでそれを隠すとは、志姫ちゃん、案外賢いぞ。 数学58点などと馬鹿にして(注6)悪かった。 しかもエプロンの紐ならシャツの袖ほど邪魔にならないし。 私も明日からは古エプロンを巻いて庭仕事をしよう。
但し、残念ながらこの後ろエプロンも万能ではない。 軒下の蜂の巣を叩き落としたり、虫のついたピカンの葉をちぎり捨てたり、 高い所に手を伸ばしたときに出てしまうお腹の肉は隠せないのだ。 全ての枝が肩より下にあれば臍の心配はなくなるのだが。 あ、私が10mの足になれば(よし第一の願いは叶っ………
注1:バレーボールは周囲のフリーゾーンを含め24x15mなので コート自体はゲートボールの方が寧ろ広い。(注2) しかし、ゲートボールは規定面積のコートだけあれば充分であるが バレーの場合はそうはいかない。 由里さん、打球の方向性にいまいち責任が持てないから 窓ガラスから20mくらいは距離を取らないと危ないのである。 注2:川原泉『ゲートボール殺人事件』参照 注3:神奈川出身の私はこの仕事を「草むしり」と呼ぶが 鹿児島で生まれ育った川原は「草取り」と言うようだ。(注4) 立花社長や保科(母)も同様に草取りと言う。 これは彼らの出身地を考察する材料の一つとなろう。 注4:花ゆめコミックス『甲子園の空に笑え!』1/4スペース参照 注5:昼に庭に出ないのは怠けているのではなく、生命を守る為である。 テキサスの6月は既に外気温38℃だかんね。 背中に羽根の生えた生き物を見るくらいじゃ済まないのだ。 注6:参照
2008.6.18 |