この種の車を運転するのはじめてなんだから じゃましないでくれ
えーと このレバーは何かな
川原泉『甲子園の空に笑え!』より

アメリカの首都はワシントン州ではありませんワシントンDCです

 

夏の休暇はワシントン州。
シアトル・タコマの空港でレンタカーを借り出して
おお?こりは、詳しくは知らぬがプリウスって奴じゃないか。
電気(+α)で走る車だ。
(ええと、コンセントはどこだろう。)
(国立公園南側の宿まで約100マイル。コードが届くのかな。)
(乾電池入れればいいんじゃない?)
など、夫婦して楽しく馬鹿騒ぎ。
あー プリウス……
―2007年の夏 私らは、まだプリウスを知らなかったのだ。


ただでさえ、レンタカー=他人の車は出発準備に時間がかかる。
座席をめいっぱい前に出さないとブレーキやアクセルに足が届かない夫。
そーすっとハンドルが胸に閊えるからハンドルの位置調整をして。
助手席の私は座席を思いきり後ろに引いて、高低も変えられるなら最大限に上げて、
背もたれは、倒したとわからない程度に倒した感じがお気に入り。
走行距離の表示のマイル/kmを切り替えて、たいていは時計が狂っているから修正し、
管理の悪いレンタカーだと物入れの中が汚れているから掃除もしなくちゃならない。
ダッシュボードの中で食いかけのチーズバーガーが腐っていたことすらあるんだから。
レンタカーは大変だ。

勝手のわからぬ初めての車種に当たると更に大変である。
まずは後ろのトランクの開け方がわからない。
5分後にたまたま通りかかった親切な旅客が隠しボタンの位置を教えてくれなかったら
わしらはレンタカー屋の駐車場から動けないまま1週間の休暇を終えたかもしれない。
ラジオのAMとFMを切り替えるのに30分かかったこともある。
幸いにしてこれは、とりあえず出発してしまい、走りながらでも解決できる問題だ。
どうせこの先1時間は単調な一本道、地図を睨んで右だ左だと指示する必要はない。
助手席の私は手当たり次第にボタンを押して行く。
勿論、あまり変な場所に触ってエンジン逆噴射!とかの事態になったら大いに困るので
「操作して良い範囲」は駐車場を出る前に夫に確認してある。
(冗談でもシフト・レヴァーをガチャガチャしたりはしない。)
が、その許されたボタンを全て試し終えてもラジオが切り替わらないのは何故。
そればかりか、途中から車内に吹き出し始めたこれは「暖房」の風ではないか。
全てのボタンを再度いじり直しても冷房に戻らないのは何故。
馴れない車は本当に大変だ。
免許を持たない私にはわからないが、運転手の夫はもっと大変。だろう。


電気の車プリウスを走らせて1時間ほど経った頃、スーパーマーケットの看板が見えた。
1週間分の飲料水やビール、果物、それに今必要なカフェイン等を仕入れておこう。
休憩も兼ねて車を駐車場に滑り込ませる。
ブレーキかけて。エンジン停止。
鍵を抜こうとして、
…抜けない。
抜けない。
抜けない。
どーなってんだこれ。抜けないよこの鍵。
ガチャガチャガチャガチャガチャ。軽くパニックする夫。
抜けない。
抜けない。
抜けない。
壊れてるのかなこれ。
AAA(AmericanAutomobileAssociation;日本のJAFに相当)に救援要請するしかないか。
それともレンタカー屋の方がいいか。
携帯電話は持ってない。でもスーパーの中には公衆電話があるだろう。(あってくれ)
鍵を抜かずに・鍵をかけずに車を離れるなんて余りに無謀過ぎるから
そのときは留守番として私が車に残ることになるだろう。
(夫が留守番・私が公衆電話に走るという選択はありません。絶対ありえません。)
特に治安の酷そうな場所ではないけれど、特に安全な訳でもなさそうな、アメリカの町。
知らない場所で1人になるのは怖いが仕方無い。
夫はレンタカー屋の書類を繰って電話番号を探す。私は未練がましく鍵を回す。
押しながら回したり。引き気味に回したり。
でも抜けない。
そして夫が車を降りかけて、違う角度から運転席を見て、見つけた。
「電源」ボタン。
エンジンを切った後、電源も切らないと鍵が抜けないのでした電気自動車。
なんて面倒な車なんだ。
初めての車は分からないことだらけで、ほんっっっっとに大変。
キャラメル食べてる場合じゃない。


ま、2〜3時間も走ってるうちに「なんとなく」慣れて
片手でポテトチップスくらいはつまめるようになるんだけどもね。
よそ様の子供を9人も乗せてたら、緊張度は違うかな。

2009年夏、副部長先生運転の車で地方大会開会式に向かう途中で事故に見舞われた
九州某県の野球部生徒さんたちに捧げようかと思ったけれど
事情のわからぬ部外者が興味本意であれこれ言うことじゃないよなと思うので
(ましてマンガと絡めてあーだこーだとネタにするのは非常に失礼な行為だと思うので)
ええと。せめて同じような悲しい事故が繰り返されませんようにと祈ります。

2014.2.25


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