「あなたが考え無しに蹴落とした小さな石は、谷底に付く頃には時速120マイルの弾丸となり 下にいる人や動物たちを殺してしまうかもしれません」 その看板は、コロラド州、ブラック・キャニオン国立公園の見晴らし台に立っていた。 川の水が大地を削って作った断崖の絶壁。谷底までの深さは約500メートル。 東京スカイツリーの展望室が451mだから、その1割増しだ。 池袋のサンシャインビルなら2つ重ねた高さ。高所恐怖症でなくとも腰が引ける。 重心はあくまで後ろ脚に残した状態で、首だけを柵の外に突き出して「おーい」と叫んでみたら 声は谷底まで届かず、途中の草木に吸収されて消えて行った(ような気がした)。
物体の落下速度を算出するには空気抵抗値が必要であり、それは石の形や重さにより異なる。 この看板の時速120マイル(≒190km)(注1)という数値はどのように求めたのだろう。 …この文の趣旨は看板の内容を検証することではない。ひとまず数字は丸ごと受け入れる。 ここで大切なのは「物体とゆーものはだな 落下すると加速度がつく」ということである。 ナゴヤ球場の客席の構造は知らないが、集合住宅の階段の踊り場よりは高い位置にあるだろう。 そして名古屋名物青柳ういろう、1本360g。大須ういろは同380g(注2)。普通の林檎の2〜3倍だ。 より高い位置から物を落とせば、より大きな加速度がつく。 重い物は空気よりも威張っているので抵抗が小さくなる=さらに加速する。 いーか穴田さん、するってェと、たとえういろうといえども当たると痛い(注3)。 この世に加速度さえなければ姫野麻子さんだって人事不省に陥らずに済んだ筈だ。 結論、加速度はおそろしい(注4)。
ナゴヤ球場に於ける対中日戦での選手の負傷は幸いにして免れた。 が、物体の加速度について、スイート・メイプルスは真剣に考えた方が良い。 実在の札幌ドーム(≠コロポックル球場)のグラウンド面からドーム最上部までの高さは68m。 その頂上から飴を落とすと、地面衝突時には131km/hに達するらしい(注5)(注6)。 数字を聞いてもうまく想像できないが、131km/hというのは具体的にどのような速度か。 秋田新幹線の盛岡〜秋田間が130km/hだそうだが、私は秋田県には行ったことがない(注8)。 非常に個人的な経験で申し訳ないが、私はアイスホッケーが好きである。 試合前の練習をゴール裏で見学していると、ゴール枠を外れたパックが目の前に飛んでくる。 リンクと客席の間には頑丈なアクリルガラスがあるので、パックが私に衝突することは無い。 それが分かっていても尚、本能的に目を瞑り、腕で頭を庇って防御の姿勢に入らずにいられない。 それ程に、パックは速い。身の危険を感じる威力なのである。 事実、運悪くパックを顔面に当てた選手は、鼻や頬を骨折し、歯を折り、流血する。 一説によると、この練習時のパック速度がおよそ130km/h前後なのだそうだ(注9)。 あのパックと同じ速度で降ってくる飴を一般人は捕捉できないし、逃げるのも間に合わないだろう。 頭を直撃されたら昏倒し(注10)、袋の角が頬を掠めたらざっくり切れて大量の出血をみる。 運よく観客のいない通路に落ちたクッキーは凶器にこそならずに済むが、無残に粉々だ。 これでは誰も得をしないではないか。
解決策を講じよう。 地元ホッケーチームの試合の休憩時間には、天井近くの作業通路から様々な小物が投下される。 広告入りチームTシャツ、コーヒー豆の試供品、各種クーポン券などの販促品だ。 クーポン券はそのまま撒かれるが、Tシャツ類には落下傘が結び付けられている。 放出された落下傘は数秒後に大きく広がり、ふわりふわりと降るのである。 これならばグラブが無くても素手で受け止めることができる。 仮に当たっても痛くは無いし、怪我もせずに済む筈だ(注12)。 開幕戦ではそこまで気が回らなかったようだが、メイプルス、 目出度く優勝を決めたその瞬間には、ぜひともパラシュート菓子をファンの頭上に降らせてくれ。 勿論、落下傘は味気ないビニール製などではない。レースや造花のついた赤やピンクの物である。 孔雀の羽や金ラメ銀ラメで飾られた落下傘がカクテル光線を浴びながら緩やかに降下するさまは さぞかし美しいことであろうと思う。 私も拾いに行きたい。楽しみだ(注13)。
注1:参考までに、ハクション大魔球の邪悪な力の源となるクシャミの時速が200km/hである。 魔球自体の速さは明らかにされていないが、200km/hに近い数字と考えて良いと思われる。 (桜子様本来の球速との足し算で300km/hを越えたなら、薫子様の手首が壊れるだろう)注2:2014年2月現在。1992年当時の資料は発見できなかった。 注3:司馬君はスポーツ推薦で進学して、物理とかの勉強には力を注がなかったに違いない。 穴田アナは1983年秋の時点で既に午後の全国ニュースを持たせて貰えるベテランであったので 瑠璃子ちゃんが完全試合を達成した1992年には「超」ベテランであり 遠い昔の学生時代に習った物理など忘れていた、ということにしておこう。 注4:だがしかし、この世に加速度がないとどうなるか。 チネチッタのクーデターが成功し、今頃(=300年後だが)全宇宙は奴等の手中にあっただろう。 こわいこわい。加速度があってよかった。 注5:但し空気抵抗を無視するというインチキ条件下。 注6:高校1年で学習した計算だ。「にぶんのいちじーてぃーじじょー」の呪文は確かに記憶にある。 しかしこの式の左辺が何であったかはどう頑張っても思い出せない。 ってか、Tってのは何のことだ?絶対温度??「g=重力加速度=9.8」は覚えているのだが。 …高校以上の物理にはあまり明るくないことを自覚している私は自動計算サイトに頼った。 その後、夫(物理学科卒)に教えを乞うて最終的には自力計算でも正答に辿り着けたが 明日の追試で数字を変えた問題(注7)が出たら正解する自信は無い。菜苗さんを笑えない。 注7:例えば林檎やういろう、ヤシの実、竜の珠などに関する問題である。 注8:川原ファンなら一度は行っておきたい土地だ。 行って、田んぼの雀を追い払う犬の顔が小池さんちのゴンと瓜二つかどうかを確認して来よう。 注9:裏付け資料は無い。 テレビで解説者が言ったのを小耳に挟んだことがあるような気がする、程度の信頼度である。 但しそれを聞いたのは私で無く夫なので、英語の能力はあまり疑わなくて良い。 私が聴き取るとエイティとエイティーンの区別さえも怪しいが。 注10:飴玉1個5グラムならば、流石に脳震盪までは行かないだろうが。 ちなみにアイスホッケーのパックは6oz≒170gである。 缶入りサクマ式ドロップの外装込みの重さとほぼ等しい(注11)。 メイプルスがドロップスを缶ごと落下させないことを祈る。 注11:手元にある、サクマ製菓のやや小さめのドロップ缶(内容量85g)の空き缶が45gだった。 サクマ式(佐久間製菓)の通常缶の中身は115gあるので単純に足したら160g。 しかし中身が重い=多いならばその分缶も大きく=重くなるので、ええと。 通販サイトを放浪したらサクマドロップ115g入り10缶で1.7kgとあった。ああそうかい。 注12:前後左右の客と獲物を奪い合って揉み合って引っかき合い殴り合いになったら知らない。 と言うか。 2011年7月、ここダラス近郊の大リーグの球場で、悲しい事故が起きている。 試合中に選手がファンサービスのつもりで客席に球を放り込んだところ 幼い息子にそれを取ってやろうと身を乗り出しすぎた父親が、6m下の地面に転落死したんだ。 「落ちる奴が馬鹿」と言ってしまえばそれまでである。何もかも自粛自主規制ではたまらない。 が、やはり、観客席に物を投げ込む際には過分に配慮して欲しいと願うのである。 2・3階席の客が落ちた場合、真下の一階にいた他人が巻き込まれる恐れもあるのだ。 球場の本塁側入口には今、亡くなった観客の記念碑が建っている。 注13:川原世界でパラシュートと言えば、一橋みすず。 国際線の運転手である弘文にパラシュートを与え、彼女は一体何をしたかったのだろう。 緩やかな速度で安全に落下した先は広い広い太平洋(アンカレジ行きの場合)。 弘文はよほど水泳の達人なのだろうか。 「泳げるけど、真冬の北極海(アンカレジ発欧州行き)じゃ泳げません」…かわいそーな王子様。 挙句の発言が「遺族の家を一軒一軒泣いてお詫びに回るのはいや」である。 みすずは、運転手の妻にはあまり向いていなかったので無いかと心配する。
2014.2.10 |