ふむ だいたいこんなもんかな
川原泉『空の食欲魔人』より

 

 

 腕立て伏せとポルノ小説の因果関係
      2年B組28番 司城 由里 
 みすずが、上半身裸の弘文の腕立て伏せを
モデルに仕立てて描いていた絵は何か。
 ワニである。水耕栽培部門のコステロ君の
ような立ちワニではなく、写実的な腹ばいワ
ニである。トドやアシカの絵ならば「うつ伏
せに寝てくれ」だし、カバや豚なら「四つ這
いになれ」だろう。腕立て伏せにはワニが良
く似合う。蜥蜴やイグアナやカメレオンや蛙
でも良さそうに思えるが、骨格が違うのだ。
(↑この場合その違いは偉大なレオナルド先
生と私にしかわからないのであまり気にしな
いよーに…)亀ならどうだ、亀も大雑把に言
えば腕立て体形であるが、その入浴でポルノ
を描いては雪村さんに失礼だ。だからこれは
亀でもない。あくまでもワニなのである。
 「空の食欲魔人」は、花とゆめ1984年
1号(1983年暮発売)に掲載された。物
語の舞台は1983年の秋から冬にかけてと

推察される。(「27歳の秋でした」「ジン
グル・ベルの賑やかさ」および「お隣の国の
民間航空機が赤い国の軍用機に撃墜された事
件*1983年9月1日」から)
 そしてその84年、ロックバンド「爆風ス
ランプ」がメジャーデビューする。爆風の人
たちに聞いてみると良い。ワニと言えば腕立
てだ。正確にはワニは腕立てができないと言
っているのだが、いーじゃないかかたいこと
ゆーなよ、である。(「無理だ!決定盤」)
 ワニは、可愛い女の子の裸が好きだ。その
実例を記した書物が「古事記」である。因幡
のワニは、ウサギが彼を騙したことに立腹し
て彼女を引ん剥いたのではない。最初から脱
がせる意図を持って、騙された「ふり」を演
じたのである。何の理由も無しにただ脱がせ
たのでは自分が完全な悪者になってしまうた
め、正当性を主張するためにウサギを罠にか
けたわけである。みすずが描いていたのは、
今まさに可愛いウサギさんを裸に剥かんとす

るワニの姿だった訳だ。ワニとウサギのポル
ノ。シルビアちゃん、気をつけて。
 なお、因幡の白ウサギのワニはアリゲータ
ーやクロコダイルではなく「ワニざめ」であ
る。おそらくみすずはこのことを知らなかっ
たのであろう。みすずもものしらずだな。
 因幡の白ウサギは、前述のように古事記の
物語である。川原は、実は「日本神話」を食
欲魔人シリーズの裏テーマとしていたのであ
る。「不思議なマリナー」には綿津見神が描
かれたし、ミソスープでは金髪の「コジキ」
が主役を張った。「アップルジャック」でう
っかり神様を出し忘れたので、林檎を(怒り
の)葡萄に置き換えて描き直した作品が「美
貌」である。神様でなく妖怪になってしまっ
たが。両作品共に崖からの転落場面があるの
はそのためだ。この点から見ても作中の腕立
て伏せ(=ワニ)と裸のウサギとの関係性は
明白であり、ゆえに腕立て伏せ=ポルノには
立派な因果関係があると申せましょう。



あなたのブラウザでもし崩れずに見えるなら
できたら原稿用紙ばーじょんで読んでやってください。
由里さんのヒマの結晶です。

2014.1.25


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