アメリカで暮らし始めてから、私の味覚はずいぶんと許容範囲が広くなった。 特に「和食」「日本料理」方面に対して。ここダラスには、ジャパニーズ・レストランも数え切れないほどある。 が、その内容は、はっきしゆってあまりマトモではない。 アメリカ人の嗜好に合わせて味付けを変えてあるのが最大の原因だろうが 板前が日系2世や韓国人で本場の和食はよく知らないなんて場合もあるし そもそも野菜や魚介類など、一部の素材は海外では手に入らない。 だから海外で懐かしい故国の料理を味わおうとすると ・せんキャベツを添えた秋刀魚の塩焼き(胴体だけ)(大根おろし無し) ・厚さ1センチもあろうかという牛肉を煮込んだ牛丼 ・ブロッコリとズッキーニとトマトとマッシュルームを揚げた天丼 …てなトンデモ・ジャパメシになってしまうんである。 これは和食で無く中華の店だが、「トーフー with スーップ」と説明された1皿を貰い 豆腐の澄まし汁のようなものだろうと信じて一口すすったら スーップと聞こえたのは実はスープではなくシロップのことで 生姜の香りの効いた激甘シロップのたっぷしかかった豆腐に涙したこともあった。 が、そんなことにももう慣れた。 最近では、たいていの変な物は臆さず食えるようになった。 むしろ先入観で拒絶していた食物に意外な美味しさを発見することさえある。 在米3年半、私の味覚は遂に日本人の固定概念を乗り越えたのだ。 単に舌が馬鹿になったとも言うが^^
てわけで。 どんな奇怪な味の料理でも、現在の私の舌ならきっと受け入れるだろう。 だから。 「それはやめた方がいいぞいまいちだ」との助言を無視し 敢えて果敢に挑んでみた。 禁断のジャム餅。
 残念ながら現在リンゴジャムはうちにないので、葡萄ジャムで代用する。 アメリカで葡萄ジャムと相性が良いとされるピーナツバターも一緒に塗りたくり 更にもう1枚の餅(写真手前)には感謝祭の残りのクランベリーソースを添えてみた。 はぐっはぐっ むに〜〜 …なるほど、やめたほうがいかったかも。確かにいまいちだ^^ 葡萄の名誉のために言うが、決して不味いわけではない。 ただ「大まぬけ」「とほほ」なんである。 「焼いた餅には甘い黄粉や餡子をまぶす。同じく甘いジャム付けて何が悪い」 「トーストにはジャムを塗る。同じデンプンの焼き餅にジャム付けて何が悪い」 「同じもち米を原材料とする白玉団子とジャムという組み合わせだってある」 理解しがたい味に遭遇してしまった際に私が取る「理詰めで美味と信じ込む作戦」も ジャム&ピーナツバターを塗った餅の前にはあっけなく敗れた。 せめてトースト同様、餅自体に塩気があればも少しマシだったのかもしれないが 来年の正月、例え家にリンゴジャムがあっても、私はそれを餅には塗らないだろう。 (ましてシナモンパウダー振りかけたりは絶対にしない。) とほほと言いながらも作った分は残さずちゃんと食べたから もち米に宿る7人の神様と葡萄ジャムに宿る葡萄の精さん、許してね。
ペン持った手+手書き文字の法則から考えて 「リンゴジャムはいまいちだ」というのは川原本人の発言と考えられる。 で、たぶん川原は過去に実際にこのジャム餅で「うげ」となった事があるのだと思うが ましゃか川原、小児期に腎炎で入院した経験なんか持ってないだろうか。 というのは、このジャム餅、 腎炎の子供のおやつとして、いかにもお馬鹿な栄養士が考えそうな物体なのである。 (腎炎の食事の基本は「低蛋白・高カロリー・減塩」である) 単調な生活を続ける長期入院の子供たちにせめて季節感のある食物を与えたい、 でも黄粉やあんこのお餅では蛋白質が多量に含まれてしまうし 磯部巻きは醤油を使うからアウトだ。 その点ジャム餅なら糖質のかたまりであり、実に都合が良い。 治療用特殊食品の低蛋白餅を使用すれば尚更だ。 てわけで、もしも病院でおやつにそれを食わされ 20年たってもその恨みを忘れていないのだとしたら …同じ栄養士として、川原にお詫びを申し上げたい。
柚子さんと孝志くんへの挑戦はここまでだ。 が。これだけで終わっちゃつまらない。 このまま中途半端でやめるわけにはいかない。 よし!それならば うちにある甘い物を片っ端から乗せるだ! 心はすでに平野レミ ただ食への情熱だけがワタクシを動かしめる。
 写真の餅にかかっているのは砂糖と共に少量の牛乳で練ったココアである。 これは予想に反して比較的美味であった。 特に餅の焦げた部分との相性が良いようだ。 汁粉と同じ感覚で楽しく食べることができてしまったのである。 ああ嘆かわしい^^; 次はインスタントコーヒーと砂糖のシロップ(写真奥のガラス容器)に餅を浸す。 ココアが合うならコーヒーだっていけるはず、と心弾ませたのだが …が。うげげ。これは、不味い。ジャムより悪い。 どうもコーヒーの酸味がいけないようだ。 そういえば葡萄ジャムも少し酸っぱい。クランベリージャムはもっと酸っぱい。 小豆餡やココアのように単純に甘い物の方が餅には合うということだろうか。 ということは、同じく単純に甘いメイプルシロップならOKに違いない♪ とわくわくしながら口に運ぶと、うげげ、これも「うげげ」なのであった。 何故だ。
でも、めげないぞ。 「パンプキン・チェーン」の商品企画室ではきっと毎日 こういうろくでもない食品の試作・試食が繰り返されているんだ。 幾多の失敗料理の屍を乗り越えた向こう側に 特製かぼちゃプリンのヒットがあったのである。
 お次は写真左からカスタードクリーム、緑茶シロップ、カラメルソース、栗クリーム。 それぞれ単品だとジャム同様に「おまぬけ」なのだが カラメル+カスタードの2段構えは結構いける。 カラメルが濃すぎ、餅の表面を覆ってカチカチに固まってしまったその食感も むしろ珍しく非常に面白かった。 どうせなら生クリームとバナナと缶詰のサクランボで飾ってみたかったが 残念ながらそれらの材料は現在うちには無く、やむなく断念。口惜しいぞ。 誰か代わりに試食して報告してくれないか? 純和風で意外性には欠けるけれど、栗+緑茶の組み合わせも絶品であった。 緑茶はスプレードライの粉末緑茶(賞味期限切れ)を利用したのだけれど 本物の抹茶ならばもっと美味だったろう。 栗+カスタードは失敗だった。洋菓子の世界では基本的な取り合わせなのにな…。
 素材の形状によっては餅の上に乗せるのは難しいけど 焼いた餅を割って中に挟むことを考えれば可能性は広がる。 今度の試料は干葡萄、ジェリービーンズ、m&m'sチョコ、ピーナツ(無塩)。 ジェリービーンズは何十種もの味の粒々の中から 「チョコレートプディング」「桃」「西瓜」「レモン」「綿飴」「ライム」「オレンジ」の 7つの味を選んでみた。 結果、ジェリービーンズのレモンとライムとオレンジ、それに干葡萄は 今後の人生でもう1度食べたいとは絶対に思わないであろう味になった。 コーヒーとジャムから導いた「餅と酸味は調和しない」という推論は 今回もきっちり当たったのである。 なべに入れた餅をポン酢で食べることは割とよくあることだと思うのだが そうすると、実はあれは美味しくないわけか? 自分の味覚がどんどん頼りなく思えて来る。 ピーナツは比較的マシだった。 同じ種実である胡麻を摺って砂糖と合わせた衣は餅に合うからな。 (じゃあ、ピーナツバターが駄目だったのは何故だ??) ジェリービーンズの中で1番美味しかったのはチョコプディング。 m&m'sは味は悪くないのだが、赤や黄色の下品な色つきチョコが餅の中で溶けて 実にとんでもない見た目になってしまった。 もしもこれを読んで明日の昼はチョコ餅にしようと思った方がいらっさったら m&m'sやマーブルでなく、普通の板チョコを使うことをお勧めする。
 最後は口直しに、これ。ベーコンとチーズの2段構え。 結局、今回試した中では、やっぱりこれが1番美味しかった。 ちっとばかりベーコンの塩分が強すぎて、チーズが生きてこなかったのが反省点。 次はベーコンを減らしてチーズを増量してみよう。 ついでにレタスとトマトも乗せてみるか? マヨネーズ、ケチャップ、ピクルス、玉ネギのスライス… 実験と結果報告は、来年の正月に餅が残ったらね。
ちなみに暖炉の前のぬいぐるみ、向かって右が「柚子」、左が「隆」である。 「孝志」じゃないのが残念^^
2003.1.22 |